こんにちは。ちぐです。
漫画のストーリーを作るにあたって、物語の面白くする要素って何なのか?
すでに世に出ている作品は、どのように構成されているの?というのを分析したくなったので、
これから読んだ/見た作品、お気に入りの作品の分析をしていこうと思います。
と言うのは、色々と漫画プロット用のノウハウを学んでふむふむと納得しても、
「この話はこうだから面白いのか!(面白くないのか!)」と言う実例や、それに自分が何を思うのかというのがわかっていないと、実質的に活用ができないような気がしてきたからです。。
分析にあたっては以下を書き出していきたいと思います。
基本的に最初の方からネタバレ炸裂なので、作品をこれから楽しみたいという方にはオススメできません。
あと、自分用にひたすら分解しているだけなのでかなり味気ないです。私の個人的な見解による分析ですので、作者の方の意図は全く反映されていません。
それでもOKという方は、私の分析作業にお付き合いいただければ幸いです!
というわけで、最初に分析したのは「クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」。
この前テレビで放送していたのをたまたま見たのですが、さすがクオリティの高さで名高いクレしん映画、すぐに引き込まれるし見ていて気持ちよく、とても感動させられました…!
また、フックの置き方がわかりやすく、回収もものすごくきれい。
分析しがいのある作品でした。それでは分析にいきましょう〜!
【あらすじ】
ある日、ひろしがロボに改造されて帰ってきた!
このロボは本当にひろしなのか?と疑いいつつ、超高機能で良い父親のロボひろしを受け入れていく野原一家。そこにに黒幕の陰謀が迫り…!
【起承転結・フック】
[起]ひろし、ロボになる
ひろしがぎっくり腰になり、エステでロボに改造される。
ロボであるということから家族(みさえ)に受け入れられないが、徐々に信頼を獲得していく
フック:(問いの手法 この時点で出たフック→解決時点という形で記しています)
WHY なぜロボにされたのか→転
IF 本当にこのロボはひろしなのか→転
WHAT 黒幕の目的は→転
WHO 黒幕は誰なのか→承・転
HOW 野原一家はどうなるのか→結
[承]ひろし、父権の強化を求める扇動者になる
黒幕の力で頑固オヤジになってしまうロボひろし。
世の中の冴えない父親を結集させ反乱を起こすが、子供たちの反撃に負け、
黒幕にも見限られて破棄される。
フック:
WHY ロボひろしはなぜ頑固オヤジにさせられてしまったのか→転
IF ロボひろしは助かるのか→転
[転]ひろし、自分を操っていた黒幕を倒す
ロボひろしは本物の自分に出会い、自分がひろしの記憶がコピーされたロボであることを知る。圧倒的な力はあれど、信用されない自分の存在に悩む。
再び黒幕に操られるが、こどもの信頼により正気を取り戻し、本物の自分とも団結して黒幕を倒す
フック:
WHICH/HOW ひろしが二人になってしまったが最終的にどちらがの頃、どう解決するのか→結
[結]ひろし、本物のひろしに家族を託す
子供と力を合わせて敵に打ち勝ったものの、力尽き果てるロボひろし。
本物の自分に家族を託し、自分も本物だ、とこどもに認めてもらった上で機能を停止する。
街の父親・母親達は一連の事件を乗り越えて互いを尊重するようになり、野原一家にも日常が戻る。
【テーマ】
父親は子供の力、家族という関係性の中で父になるのであり、社会や権力者の力で父権をふりかざすものではない
【ログライン】
ひろしの記憶がコピーされたロボが、強い父権の復活を目論む黒幕に操作され、暴走しながらもしんのすけの信頼で目を覚まし、機能停止するまで家族を守った末、本物の自分に家族を託す話
(ややこしい…)
または
冴えない父親である春日部警察署長が強い父親の再来を求め、ひろしの記憶をコピーしたロボに父親たちを扇動させるが、野原家の家族愛の力がそれを打倒する話
(このログラインだと悪役が主語になってしまうが、こっちの方が文章としてわかりやすい)
【対立構造】
・ロボひろしを信じるしんのすけx信用できないみさえ(=父親を排除する母親)
・父親の居場所・権利をないがしろにする母親達x居場所のない父親達
・ロボひろし(圧倒的な力・便利さ・偽物)x生身ひろし(生身のひ弱さ・それを引け目にしない情熱・本物)
・父権のみを強調する黒幕x家族の絆(それぞれを尊重すること)で乗り越える野原一家
【カタルシス】
・嫌な感じのヤンママにちちゆれ同盟が言い返す
→<敵の打倒>
・自分勝手で父権を振り回す黒幕を婦警(女性)がとらえる
→<敵の打倒>
権利を主張しすぎ、増長した父権の第三者による抑制。
・ロボひろしが全力を尽くした末に壊れ、本物のひろしが残る
→<全力での尽力>・<真偽の解決>
・偽者であっても全力で家族を愛したロボひろしを家族が認めてくれる
→<主人公/関係者の心の救済>
【見所】
随所に挟まれたギャグとアクションで深刻な問題を重くしすぎないで飽きさせず見せている
父権、母権両方が失墜する様を描き、男女どちらが見ても不快にならない構造になっている
ロボひろしが自分のアイデンティティに揺らぐが、しんのすけが揺るぎなくロボひろしを愛し信頼してくれるので安心して見れる(しんのすけの主人公性も高まる)
敵基地の不思議な場所感がワクワクさせる
【個人的な感想】
・好み度★★★★★
めっちゃ好みでした。
私は社会問題を扱っている作品とか、それを風刺したり比喩したりする娯楽作品が大好きなので、ど真ん中ドストライクです!!最高でした!!!
・社会問題への回答
男性・女性・こどもの権利のバランスという難しい問題を、誰が見ても納得がいくように描いているのが素晴らしかったです。
想像するに、年々強くなっていく「女性・こども」の権利にとまどいを覚えながら、それを言い出せない男性というのは現実にもたくさんいるんだと思います。
そういった人たちの「父権を復活させたい」という深層的な欲求を一時的に叶えてあげるところは、見ていてとても痛快。ややもすれば「今時それやるの!?」となりそうなところですが、序盤で「かわいそうな父親像」をしっかり描いているので、女性の私でもシンプルに共感でました。
一方で、黒幕に操られるロボひろしと、ちちゆれ同盟に参加する父親達は、社会構造や会社によって権利を与えられた男性・父権というものを強く感じさせました。
ちちゆれ同盟を失墜させることで、機械的に与えられた「強い父親像」を過去の通り信じ続けることは間違っていると明らかに示し、父親達の思いを別の解決(現状のある程度の甘受・家族の関係性の再構築)に向けさせているのは、なんというか鮮やかとしか言いようがなかったです。
「叶えようもない願望」に悩む人を救うために、それを物語上で実現させた上で、その願望の問題点を再認識させ、別の解決策を見つけるように促す。
これはなんだか物語制作に使えそうですね!!
・ロボの比喩
あと、ロボひろしが全力で戦った末に、家族に認められ、頼りないひろしに父親の座を託すところにも、上記と同じメッセージが強く現れていたと思います。
ロボの活躍と活動停止は、会社などで人間性を失うまでに戦い続けた父親達への承認・救済・そういった存在の第三者による滅亡と、生身の生還は頼りなく不確実な、しかし愛すべき今後(生身)への展望に見えました。
ロボVS生身の対立というと、ロボのアイデンティティの行方は…というのが気になってしまいますが、後から考えてみると、このお話はロボというキャッチーでわかりやすいモチーフを使って、一人の人間(父親)の中に存在する複数のアイデンティティを取り扱っていたように思います。
・社会問題を描くって
社会問題については私も書いてみたいのですが、それをお話にどう盛り込めばいいかってよくわからないんですよね。真っ向から描いてしまうとただ重くて暗くてキツい話になってしまうし(笑)
このお話が楽しく見れたのは、ギャグやアクションもありますが、「概念ではなく、家族内での身近な視線で事件を見つめる」「問題におけるパワーバランスの偏重→全体のバランスの回復・解決を描く」ことによって問題が解決されていったことが大きかったような気がします。あと、「重大な悪事は家族以外の人(ロボひろし含む)にお任せする」のも安心して見るのに大事だったのかもと思いますw
・何はさておき面白かった
まぁ難しいことは置いといたとして、この作品は本当に面白かったです!
ギャグで笑わせてもらい、ハラハラドキドキさせられ、親子の絆に感動させられ、切ない別れに心揺さぶられ。。。
やはりクレしん映画はクオリティが高い…!どうやったらこんなに美しい話が作れるの!
主要キャラはお馴染みの面々ですが、ゲストキャラにも見た目・振る舞いに印象的な個性があり、キャラの作り方の参考にもなりました。
また別の作品も見てみたいと思います〜
というわけで、今回はここまで。
最後までお付き合いいただいたあなた、読んでいただいてありがとうございました!!
次回は映画「華麗なるギャツビー」です。お楽しみに〜!!